このビレッジのオープニングに先駆けて、モンゴルの伝承民話のビデオ絵本を作成した。つねに移動しながら家族で暮らしているモンゴルの人たちにとって「民話」は生活の糧であり、知恵であり、大自然で暮らしていく掟でもあるようだ。僕は、このプロジェクトを立ちあげてから数多くの「民話」を教えて頂いたのだが、それは、過去のものではなく、今のモンゴルにおいて、日常的に使われているものであることを知って驚いた。そして、なによりも、そのシンプルな物語から、「仲間」っていったいなんだろう? 「人間」って?「自然」って?「社会」って?と、あらためて、今の世の中を問われているように感じた。
人間の価値観は、成長を優先する近代的な合理主義から、微妙に変化してきている。地球環境への関心の高まりもその現れであるし、また情報化社会の進展は、新しい文化の時代を招来させる。そんな21世紀をどのようにプロデュースしていけばいいのか、子供たちに何を残してあげられるのか、また、そのためには僕自身どう生きていけばいいのか、モンゴルの「民話」は、忘れてはいけない何かに気付かせてくれる。そんな訳で、ナレーションをいれたビデオ絵本なるものを「テンゲル」のオープニングセレモニーとして制作し「上映」したのである。ここに紹介するモンゴル民話をご覧いただく方々も、きっとそんな「思い」を持っていただけるのではないか、と思う。教訓としての「民話」ではなく共感としての「民話」でありますように。
※モンゴル伝承民話は、テンゲルのサイトでどうぞお楽しみください。